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相続税対策①  暦年課税制度を使って賢く財産を次の世代へ遺そう。贈与税の基礎知識

生前贈与は、個人が亡くなる前に自らの資産を家族や親しい人に分配する方法として注目されています。相続税の負担を軽減し、円滑な資産移転を実現する手段ですが、税制や法律の知識が求められ、計画的な準備が必要です。本記事では、生前贈与のメリットや注意点、具体的な手続き方法について詳しく解説します。適切な資産管理を通じて、家族との円満な財産承継を目指しましょう。

  本記事は相続税の一般的な基礎知識を紹介するものです。
  個別具体的な相続税の相談、計算は税理士に相談しましょう。

目次

贈与についての基礎知識

贈与とは

贈与とは、当事者の一方(贈与者)が財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思表示をし、相手方がこれを承諾することによって、その効力が生じる契約です。

  • 贈与者と受贈者の意思の合致によって成立する。よって書面は不要
  • 口約束による(書面によらない)贈与契約は履行前(贈与する前)であればいつでも解除ができる
  • 書面による贈与は、その契約の効力を発生した時点(契約日)においてその効力が生じる

贈与の種類

  • 単純贈与:贈与契約の都度、その意思決定が行われる

  • 定期贈与:期間等を定めて定期に一定の贈与を行うことを約束した贈与契約

  • 負担付贈与:贈与する代わりに老後の面倒を見てくれ等、受贈者に一定の負担を負わせる贈与契約

  • 死因贈与:贈与者が死亡することを条件として贈与の効力が生じる生前の契約

  • 遺贈:贈与者が遺言によって一方的に意思表示をする贈与

贈与税についての基礎知識

贈与税の目的

贈与税の目的は、個人間で行われる財産の贈与に対して課税し、所得や資産の不平等を是正するためです。具体的な目的は以下の通りです:

  1. 富の集中を防ぐ: 特定の個人や家族に富が過度に集中するのを防ぎ、社会全体で富がより公平に分配されるようにするため。

  2. 租税回避の防止: 贈与を使って相続税を回避しようとする行為を抑止するため。贈与税と相続税を一体的に運用することで、不当な租税回避を防ぎます。

  3. 税収の確保: 財産の移転に伴い、政府が適切な税収を確保するため。特に、大きな財産が相続や贈与によって移動するときに課税が行われます。

このように、贈与税は資産の公平な分配と財政政策の一環として重要な役割を果たしています。

贈与税と相続税

相続税の基礎控除額を超える財産を遺して死亡すると、その死亡した者から財産を取得した相続人は相続税が課税されることになります。しかし生前にすべての財産を移転してしまえば相続税を払わなくて済みます。
そこで上記2.で挙げた通り、相続税を回避しようとする行為を抑止するための機能として、相続税を補完する目的から贈与税が課税されます。

贈与税の課税財産・非課税財産

贈与税はその年の1月1日から12月31日の間に贈与により取得した下記のような財産(経済的利益)の合計額から非課税財産を差し引いたものに課税されます。

贈与税の課税対象となるもの

  • 本来の贈与財産:贈与により取得した現金、土地、建物など金銭に見積もることが可能な経済価値があるものは、すべて本来の贈与財産として課税されます。

  • みなし贈与財産:実質的に贈与財産として同じく効力のある、保険料負担者が保険金受取人と異なる生命封建契約の死亡保険金・満期返戻金・個人年金保険などは保険料負担者から保険金受取人に贈与されたものとして課税されます。

  • 低額譲受け:時価1,000万円の土地を100万円で譲り受けたなど、著しく低い価額で財産を譲り受けた場合には、その譲受け時の財産の時価と譲渡価額の差額が贈与としてみなされ贈与税が課税されます。

  • 債務免除:借入金債務を免除または肩代わりしてもらった場合、その債務の金額は課税されます。(返済が困難である場合の扶養義務者による肩代わりは対象となりません)

  • 無利子の金銭の貸与:夫婦間、親子間等で無利子で金銭を貸した場合、利子に相当する部分を贈与とみなし贈与税の対象となります。

贈与税の課税対象とならないもの

本来の贈与財産、みなし贈与財産のうち政策的見地等から贈与税の課税対象とるうことが適当でないものを「贈与税の非課税財産」として次の通り定めています。

  • 法人からの贈与により取得した財産(一時所得や給与所得になる)
  • 親など扶養義務者から贈与を受けた生活費、教育費など
  • 社交場必要と認められる香典、贈答、見舞い、祝い金など
  • 特定障害者扶養信託契約に基ずく信託受益権のうち一定金額まで
  • 公職選挙法上の選挙における候補者が選挙運動に関して贈与した財産
  • 宗教・慈善・学術その他公益を目的とした事業を行う者が贈与により取得した財産で、公益事業に供することが確実なもの
  • 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
  • 離婚による財産分与によって取得した財産
  • 相続税の対象となる贈与

贈与税の計算

贈与税の基礎控除

贈与税の基礎控除額は110万円。

課税価格が基礎控除額の110万円を超える場合、その超える部分の金額が課税対象となります。
なお、基礎控除額は、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円です。贈与をした人ではありません。つまり親が長男に110万円、二男に110万円の贈与をした場合、贈与税の課税はありません。

つまりこの基礎控除額までであれば贈与税を支払うことなく、財産を次の世代へ移転させることが可能となります。

ただし、暦年課税制度による贈与財産の加算制度により相続発生時から一定期間の贈与は相続税の課税対象となりますので注意が必要です。

贈与税の計算方法

納付税額=(課税価格-基礎控除額110万円)x税率ー控除額

特例贈与財産(贈与の年の1月1日において18歳以上の直系尊属(親・祖父母等)から受ける贈与財産

基礎控除後の課税価格(特例贈与)税率(%)控除額(万円)
200万円以下10
200万円超400万円以下1510
400万円超600万円以下2030
600万円超1,000万円以下3090
1,000万円超1,500万円以下40190
1,500万円超3,000万円以下45265
3,000万円超4,500万円以下50415
4,500万円超55640

一般贈与財産(上記特定以外の贈与)

基礎控除後の課税価格(特例贈与)税率(%)控除額(万円)
200万円以下10
200万円超300万円以下1510
300万円超400万円以下2025
400万円超600万円以下3065
600万円超1,000万円以下40125
1,000万円超1,500万円以下45175
1,500万円超3,000万円以下50250
3,000万円超55400

贈与税の特例を使った相続税対策

贈与税の特例を活用すれば、大きな財産移転が発生する際でも、贈与税及び将来発生する相続税の税負担を軽減できる可能性があります。住宅購入資金の贈与や教育資金の一括贈与など、さまざまな場面で適用される特例制度を知っておくことで、将来の資産計画をより効率的に進めることができるでしょう。本記事では、贈与税の知っておきたい特例について解説します。

なお税に関する制度は度々改正が加えられています。令和6年10月現在有効な制度について解説いたします。

贈与税の配偶者控除

配偶者から次の要件を満たす居住用不動産または居住用不動産の購入資金の贈与を受けた場合、その金額について基礎控除額110万円とは別に、最高2,000万円まで配偶者控除の適用を受けることができます。
またこの特例を受けた贈与財産については、控除された金額に相当する部分(2,000万円まで)は「生前贈与加算」の対象とはなりません。

適用要件

  • 婚姻期間が20年以上あること
  • 贈与財産が日本国内にある居住用不動産(土地、家屋または居住用不動産を購入するための金銭)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその居住用不動産に居住しており、かつ、その後引き続き居住する見込みであること
  • 同じ配偶者から過去にこの特例を受けていないこと

申告書の提出

贈与財産が2,110万円(配偶者控除2,000万円+基礎控除110万円)以下で特例適用後の贈与税がゼロとなる場合でも、特例の適用を受けるためには、贈与税の申告書を提出しなければなりません。

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例

直系尊属(父母・祖父母など)からの贈与により住宅取得等資金を取得し、一定要件を満たした場合には、基礎控除額110万円や相続時精算課税制度の特別控除額2,500万円とは別に、住宅取得等資金のうち下記の非課税限度額まで贈与税が非課税となります。なお、この特例の適用を受けて非課税となった贈与財産については、「生前贈与加算」の対象にもなりません。

非課税限度額

贈与税の基礎控除額、相続時精算課税制度の特別控除とは別に令和5年12月末までの贈与については、「省エネ住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで」の始期の贈与は非課税です。

適用要件

  • 受贈者(財産を譲り受ける者)は、その資金を受けた年の1月1日において18歳以上であり、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
  • 以下の住宅取得等資金の贈与であること。
    • 新築住宅の建築・取得のための資金
    • 一定の中古住宅の取得のための資金
    • 住宅の新築等に先行してその敷地の用に供される土地等を取得するための資金
    • 工事費用100万円以上の一定の増改築のための資金
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに新築・取得・増改築等をし、居住するまたは居住する見込みであること
  • 適用対象となる住宅は床面積50㎡以上240㎡以下(受贈者が贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下の場合は床面積40㎡以上)
  • 中古住宅については新耐震基準に適合する住宅であること
  • 所定の書類を添付して贈与税申告をすること

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に行われる子や孫に対する教育資金の一括贈与について、適用要件を満たす場合に、一定の額まで贈与税が非課税になります。(令和5年度税制改正)

対象となる教育資金

教育資金として認められるのは、主に以下のような費用です:

  • 学費(入学金、授業料、施設費など)
  • 教科書代
  • 学外活動に必要な費用(クラブ活動など)

適用要件

以下の条件を満たす必要があります(令和5年改正)

  • 贈与を受ける者(受贈者)は、原則として30歳未満で贈与前年の受贈者の所得が1,000万円以下であること
  • 贈与を行う者(贈与者)は、受贈者の直系尊属(父母や祖父母)であること
  • 一括贈与の際には、贈与契約を締結し、教育資金として使用する旨を明記する必要があります
  • 贈与の資金は、受贈者の教育に使われるものであることが確認できること(例:領収書の保管など)

非課税限度額

受贈者1人あたり最大1,500万円(習い事等は最大500万円)まで(令和5年度税制改正)
一括贈与の非課税限度額には上限があります。具体的な金額は法律や規制の改正により変わる可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に行われる子や孫に対する「結婚・子育て資金の一括贈与」について適用要件を満たす場合に、一定の額まで贈与税が非課税となります。

対象となる資金

以下のような資金が対象となります:

  • 結婚資金:結婚に必要な費用(例:結婚式の費用、住宅の購入・賃貸に必要な資金など)。
  • 子育て資金:子育てに関連する費用(例:育児用品、保育園や幼稚園の入園・通園費用など)。

非課税の条件

以下の条件を満たす必要があります(令和5年改正)

  • 受贈者は、原則として18歳以上50歳未満で贈与前年の合計所得金額が1,000万円以下であること。
  • 贈与者は、受贈者の直系尊属(父母や祖父母)であること。
  • 非課税限度額が設定されており、その範囲内での贈与が対象です。具体的な金額は法律や規制の改正により変わる可能性がありますので、最新の情報を確認することが重要です。
  • 贈与契約を締結し、結婚または子育てに使用する旨を明記する必要があります。
  • 使用証明として、資金が本当に結婚や子育てに使われたことが確認できる証明書類(領収書など)を保管する必要があります。

非課税限度額

受贈者1人につき1,000万円(令和5年改正)
結婚・子育て資金の一括贈与についての非課税限度額は、法律や規制により異なります。具体的な額や変更がある場合もあるため、最新の情報を税務署や専門家に確認することをおすすめします。

贈与の注意点

贈与は民法上は、贈与者の「あげる」という意思と、受贈者の「もらう」という意思が合致すると成立します。しかし相続発生後のトラブルや、贈与税・相続税の課税対象とならないように下記の対策をしておくことが望ましいです。

  • 贈与契約書を作成する。行政書士等の専門家の助けを借りて法的に有効な贈与契約書を作成しておきましょう。
  • あえて年間110万円を超える贈与をして贈与税の申告・納付を行うことで贈与の証拠となります。
  • 名義預金に注意する。「名義預金」とは、名義だけを子供にしておいて実質は親が管理している預金口座のことです。税務署は名義ではなく実体でその所有者を判断します。

まとめ

いかがだったでしょうか。

贈与税は、贈与者が贈与を通じて財産を受贈者に譲渡する際に課せられる税金です。日本の税法では、贈与の額が一定の基準を超えると贈与税が課税されます。贈与税の税率や基準額は贈与の額に応じて異なり、様々な特別控除が存在します。また制度は度々改正がされるため、詳細な税額計算は税理士に依頼する必要があります。

贈与税は一般的に相続税よりも税率が低く設定されており、贈与を上手く利用して生前に財産の子や孫に移転しておくことにより相続税の課税を回避することができる場合もあります。遺言書の作成と共に早い段階から制度を知って対策を立てておくことをお勧めします。

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