オルカン投資(オール・カントリー投資)は、世界中の株式市場に幅広く分散投資する方法として、近年注目を集めています。特定の国や地域に偏らず、先進国から新興国まで幅広く投資することで、リスクを分散しながら長期的な資産形成を目指すことが可能です。この記事では、オルカン投資の基本的な仕組みやメリット・デメリット、そして投資初心者にもわかりやすいポイントを解説します。これから世界全体に目を向けた投資を検討している方にとって、必見の内容です。
この記事を読んで欲しい人
投資を始めるのに不安な人
オールカントリーインデックスって話題だけど何?という人
投資信託のオルカンとS&P500で迷っている人
結論
「アメリカが絶対に成長する」と思う人はS&P500
「日本が絶対に成長する」と思う人は日本のインデックスファンド
「世界は成長するけどアメリカに偏るのは不安」な人はオルカン
人気の投資信託「オールカントリー」とは?
2024年から始まった新NISAにおいても米国の株式に投資するS&P500と並んで人気商品となっている「オールカントリーインデックスファンド」通称「オルカン」とは、広い国々の企業に投資することができる投資信託をいいます。
具体的には、MSCI ACWI(MSCI All Country World Index (モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社)」が算出する株価指数))が代表的なオールカントリーインデックスで、このインデックスをベンチマークとして同様のパフォーマンスを目指すファンドを通称「オルカン」といい、各運用会社が販売している投資信託です。この記事では主に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を例にご紹介します。
オールカントリーインデックスの特徴
- グローバルな分散投資
オールカントリーインデックスの最大の特徴は、世界中の企業を対象に投資することで、特定の国や地域に依存しないため、リスクの分散効果が高いことが挙げられます。オルカンの投資対象はアメリカ、ヨーロッパ、日本、そして新興国など、全世界の株式の85%をカバーし、47ヵ国、約2,800銘柄に渡ります。校正銘柄は「時価総額加重平均」で決められ年に4回見直しが行われます。投資対象は様々な市場にまたがるため、個別市場のリスクを抑えることができます。 1つのインデックスに投資するだけで、世界全体の株式市場に幅広く投資できるため、初心者でも手軽にグローバル投資が可能です。 - 先進国と新興国をカバー
先進国市場(アメリカ、ヨーロッパ、日本など)の企業だけでなく、今後大きく経済成長するだろうと言われるインドやブラジルなど、新興国市場の企業が投資対象に含まれ、成長が期待される国々の企業にも投資することができます。グローバルな経済成長を享受できるため、長期的に市場の成長に期待できます。また銘柄数が多いため、特定銘柄の下落に影響されるリスクは比較的少ないと言えます。 - 長期的な成長の可能性
世界経済全体の成長に伴って、企業の価値が上昇することを期待できるため、長期的な資産形成に向いています。特定の国や地域にリスクを集中させず、世界全体の成長に投資できるのが魅力です。
時価総額加重平均(しじかそうがくかじゅうへいきん、Market Capitalization-Weighted Average)は、株式市場において特定の指数やファンドが構成銘柄をどのように反映するかを計算する方法の一つです。企業の時価総額に応じてその企業の株式の影響力を加重し、その結果を平均化します。
時価総額加重平均は、各企業の市場価値に基づいて加重された平均で、指数やファンドの計算方法として広く用いられています。市場全体の動向を反映しやすい反面、大企業に依存しやすいという特徴があります。
仕組み
- 時価総額:
各企業の株価に発行済み株式数を掛け合わせたもので、その企業の市場価値を示します。つまり、企業の規模が大きいほど時価総額が大きくなります。- 時価総額 = 株価 × 発行済み株式数
- 時価総額 = 株価 × 発行済み株式数
- 加重平均:
構成銘柄の時価総額が大きい企業ほど、その株価変動が指数全体に与える影響が大きくなる仕組みです。つまり、時価総額の大きい企業の株価変動が指数全体の動きを強く左右します。
時価総額加重平均のメリット
- 市場の実態を反映:
大企業が市場全体に与える影響を正確に反映できるため、実際の市場動向をよく捉えています。 - 安定性:
大きな時価総額を持つ企業は、通常、株価のボラティリティ(変動幅)が比較的低く、指数の変動も穏やかになる傾向があります。 - 自然な調整: 市場の株価変動に伴い、時価総額が自動的に調整されるため、ポートフォリオ(資産配分)のリバランス(資産配分の再組み替え)の必要が少なくなります。
代表的な時価総額加重平均の指数には、オルカンの他に以下のものがあります。
- S&P 500: アメリカの主要500社の時価総額加重平均で構成される指数。
- 日経平均株価は株価単純平均を使っていますが、TOPIX(東証株価指数)は日本の上場企業の時価総額加重平均を使用しています。
弱点
- 大企業に偏る:
時価総額の大きい企業が指数に与える影響が過大になり、中小企業の株価動向が反映されにくくなる。 - バブルリスク: 特定の企業やセクターの時価総額が異常に高くなった場合、指数全体がその企業やセクターに依存するリスクがある。
オルカンのリスクは?
それではこの優れた投資商品「オルカン」のリスクを見てみましょう。
オルカン(全世界株式インデックスファンド)の投資には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのリスクも伴います。これらのリスクを理解することは、投資判断において非常に重要です。以下はオルカンに投資する際の主なリスクです。
市場全体に依存する
世界全体の市場が下落する際は、オールカントリーインデックスも影響を受けます。
「インデックスファンドはリスクが低い」と言っても、その投資対象は株式100%です。市場全体が暴落する局面では、投資額が大幅に減少するリスクもあります。債券や金など、リスクヘッジとなる資産クラスに分散投資をしていないため、株式市場の下落時にはポートフォリオ全体が同様に下落するリスクがあります。
為替リスク
オルカンは日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、新興国を含む世界中の株式市場に投資しています。そのため、外国通貨建ての資産に投資することになり、為替相場の変動が投資のリターンに影響を与える可能性があります。 日本円が他の通貨に対して急激に強くなった場合(円高)、外貨建ての資産の価値が目減りするリスクがあります。逆に円安になればリターンが増加することもありますが、為替の変動によって投資成果が左右されるのはリスクの一つです。
国別リスク・地域リスク
オルカンは、先進国と新興国の両方に投資しています。新興国は特に、政治的な不安定性、経済の不確実性、規制リスクなどが大きく、これらの国での急激な政策変更や経済的混乱が株式市場に大きな影響を与える可能性があります。 新興国市場は特にボラティリティ(価格変動)が大きく、リターンが高い一方でリスクも大きくなる傾向があります。また、地政学的リスク(例:戦争や内乱)や、自然災害、疫病などもリスク要因です。
米国企業への依存
上記の構成銘柄でご覧いただけた通り、全世界に投資すると言っても企業の時価総額で投資先が決められるため、その投資先は米国企業が64%になっています。つまり米国企業の業績がそのパフォーマンスに色濃く反映されます。
「どうせ米国企業が半分以上ならばS&P500でいいのではないか」と、いうことになります。実際問題として下記のチャートで分かる通り、ここ数年は米国の成長が著しく、米国以外の国が足を引っ張った結果、オルカンはS&P500と比較してパフォーマンスが悪くなってしまいました。
(出典:SBI証券)
オルカンのメリットは?
次にオルカンに投資することのメリットを見てみましょう。
分散効果の最大化
- 地理的分散:
世界中の株式市場に投資するため、特定の国や地域のリスクに偏らず、地理的な分散が非常に効率的です。これにより、一国の経済危機や政治リスクがポートフォリオ全体に与える影響が軽減されます。 - 業種の分散:
世界中の様々な業種の企業に投資するため、特定の業種や企業の業績悪化が全体に与える影響が抑えられます。
リスク分散
オルカンに投資することで、先進国(アメリカやヨーロッパの主要国など)と新興国(インドや中国、ブラジルなど)の株式市場にバランスよく投資ができるため、リスクが広く分散されます。一国や一つの企業に過度に依存しないため、長期的にはリスクが低減されます。
低コスト
オルカンはインデックスファンドであるため、ファンドマネージャーによる個別の銘柄選択ではなく、指数に連動した運用を行います。そのため、運用コストが低く抑えられるという特徴があります。特に最近ではかなり低コストのファンドが販売されており、低コストで、長期的な投資に向いています。
シンプルな投資方法
世界全体に分散投資ができるため、他の個別の資産クラスや地域に対する追加の投資を考える必要がなく、シンプルな投資戦略で済む点がメリットです。特に、長期的な資産形成を目指す場合、複雑な調整を行わずに、放っておくことができる「ほったらかし投資」にも適しています。
成長国にも投資できる
新興国や成長市場にも含まれるため、これからの経済成長が期待される国々に投資することができます。経済成長率の高いインドなど新興国は将来的に大きなリターンを生む可能性があり、リスクとリターンのバランスを取ることができます。
長期的な成長の恩恵を享受
世界経済は長期的に見れば成長し続けてきたため、オルカンを通じて世界全体の経済成長の恩恵を享受できる可能性が高いです。特定の国や地域の経済に依存せず、広く分散されたポートフォリオで世界の成長に参加できます。
リバランスの必要性が少ない
世界の株式市場全体に自動的に投資しているため、個別の銘柄や地域のリバランスを行う必要がありません。これは、投資家が手間をかけずに、長期的な資産形成を進められるというメリットです。
上記で説明したとおり、オールカントリーの構成銘柄は「時価総額加重平均型」となっています。その結果として構成銘柄の63.8%を米国企業が占めています。この構成銘柄は毎年2月、5月、8月、11月に見直されます。直近1年間で下記のように構成銘柄が変更されました。
- 米国企業:追加8/削除42=△34
- 日本企業:追加3/削除39=△36
- 中国企業:追加36/削除201=△165
- インド企業:追加34/削除4=+30
ご覧の通り、中国企業が大幅に減らされる一方で、多くのインド企業が構成銘柄に加えられました。
またロシアのウクライナ侵攻が始まったときには、ロシア企業を投資対象から全て除外しました。
まとめ
いかがだったでしょうか。
オルカン(全世界株式ファンド)は、広範な分散投資を効率的に実現し、リスクを低減させつつ、世界経済全体の成長に投資することができる点が大きなメリットです。長期的な資産形成や、手間をかけずに投資をしたい人にとって特に適しています。また、低コストであるため、投資にかかる費用も抑えられます。
一方でS&P500など米国の株式に集中投資するファンドや、成長企業の個別銘柄への投資、為替リスクを回避した日本市場への投資などと比較すると、多くのリスクが複雑に存在します。また米国や欧州、日本などの先進国、またはインドなどの新興国のいずれかが極端に成長した場合、他の国を包括したオルカンでは、その成長の恩恵を受けられないデメリットが存在することも確かです。
結論として、「絶対成長する!」と思える、特定の企業や国がある場合には、その国のインデックスファンドや個別株を購入すれば、最も高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。一方で「アメリカも成長するけど、これから新興国もどんどん伸びていく」と考える人は、オルカンは新興国株式も含みつつ、そのリスクを最小限に抑えるために常にリバランスをしてくれる優れた商品です。
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