遺言とは、自分が亡くなった後にどのように財産を分けるか、または他に伝えたい自分の想いや指示をあらかじめ書き残しておく文書です。これにより、遺産をどのように配分するか、自分の希望や特別な指示が明確に伝わります。遺言を作成することで、家族や大切な人たちがあなたの意志に基づいて遺産を受け取れるようにすることができ、後々のトラブルを防ぐ助けになります。
今日は遺言についての正しい知識を整理して、遺言作成の第一歩にしていただければと思います。
遺言とは何かを知って準備しましょう
遺言を作成する目的
遺言(いごん)とは、個人が自分の死後にどのように財産を分配するか、またはその他の個人的な指示を残すための文書です。遺言は、遺産相続に関する自分の意志を明確にするための重要な手段であり、以下のような目的があります。
- 財産の分配方法の指定: 自分が持っている財産(不動産、預金、株式など)を、誰にどのように分配するかを具体的に指示できます。これにより、法定相続分とは異なる分配が可能になります。
- 特定の人への遺贈: 法定相続人、または法定相続人以外の特定の個人や団体(企業や慈善団体など)に特定の財産を個別に指定しておいて自分の死後に贈与(遺贈)することができます。
- 後見人の指定: 認知症の配偶者や未成年の子どもがいる場合、後見人を指定することで、その子どもの将来を守る手配ができます。
- 相続遺産管理人の指名: 遺産の管理や分配を行う「遺言執行者」を指定することができます。遺言執行者は、遺言に従って遺産を管理・分配する役割を担います。相続人間の争いを防止するため、通常は行政書士などの法律知識のある第三者を指名します。
- 葬儀の指示: 自分の葬儀や埋葬方法についての指示を記載することができます。例えば、特定の宗教儀式を行うように指示することなどです。近年では海に遺骨を流す「散骨」なども広がりを見せています。散骨を行う際には、法律や地域の規制に従う必要があるため、事前に確認することが重要です。
- 自分の想いを残す: 遺言では付言として残された家族への自分の想いを残すことができます。遺産配分の理由はもちろんのこと、感謝の言葉などを残すことができます。相続手続きに伴う争いを防止するためにも是非活用しましょう。
遺言の種類
遺言は、民法で非常に厳格な要件が定められており、以下の3つの形式で作成することができます。
どの形式の遺言を作成するにしても法的に有効な形式でなければ、遺言そのものが無効となってしまいます。行政書士など専門家の助けを借りて作成することをお勧めします。
- 自筆遺言書: 自分で手書きで作成する遺言書で、全文を自筆で書く必要があります。日付や署名も必要です。この形式は比較的簡単で費用もかかりませんが、法律に適合しない場合には無効となることがありますので、専門家の助けを借りて作成することをお勧めします。
2020年7月10日から法務局における自筆証書遺言の保管制度が始まりました。この制度を利用して遺言書を保管しておくことにより、自宅等で保管するよりも棄損や改ざんを防止することが可能です。但し下記の公正証書遺言とは違い、遺言書の内容や法的有効性を法務局が保証するものではありません。
また相続発生後、家庭裁判所で遺言の検認を受ける必要があります。 - 公正証書遺言: 公証人役場で公証人及び2人以上の証人の立会いのもとで作成される遺言書です。公証人が遺言者の意志を確認し、法律に適合する形で作成するため、遺言通りに相続が実行される確実性がかなり高いとされています。また相続発生後に家庭裁判所の検認は不要です。一方でこの形式は公証役場や証人の費用がかかり、事前に公証人と案文の作成、擦り合わせなどが必要な為、専門家の助けによる事前準備が欠かせません。
- 秘密証書遺言: 遺言書の内容を秘密にしたまま、公証人に遺言書を見せて封印してもらう形式です。この方法は内容が公開されないためプライバシーが保たれますが、公正証書遺言と違い公証人が遺言書の内容を精査したり、内容についてアドバイスを受けることはできません。また費用もかかるため、余り利用されていません。
日本の遺言書の作成状況
日本では、遺言書の作成率がまだ低いものの、遺言書に対する関心は高まってきており、法的なトラブルを避けるために遺言書の作成を考える人が増えています。
法務省による平成29年の調査によると、自筆証書遺言・公正証書遺言を作成状況について、「自筆証書遺言を作成したことがある(3.7%)」「公正証書遺言を作成したことがある(3.1%)」でありました。
世代別に見ると、作成率が最も高いのは 75 歳以上で「自筆証書遺言を作成したことがある(6.4%)」「公正証書遺言を作成したことがある(5.0%)」と回答しています。
自筆証書遺言・公正証書遺言共に年代が上がるにつれて作成率も上がる傾向にありました。
一方で同じ調査で「今後遺言書を作成したいと思うか」については、全ての世代で 3 割以上が自筆証書遺言・公正証書遺言いずれかを「作成したい(どちらかといえば作成したい)」と回答しています。
(出展:総務省 我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務)
また最高裁判所の司法統計によると、遺産の分割を巡って全国の家庭裁判所に持ち込まれた審判・調停の件数は2019年に1万5842件。 20年で1.5倍に増え、近年は1万5千件前後の高止まりが続いています。
遺産分割で愛する家族がバラバラになるのを防ぐためにも遺言書の作成が必要です。
遺言書と相続税
遺言書を適切に作成することで、相続税の負担を軽減する効果を見込むこともできる場合もあります。
- 特定の人への遺贈:遺言書を利用して、特定の人や団体に財産を贈与(遺贈)することで、遺産の配分を効率的に管理し節税効果を望めます。
- 相続税の控除と特例を活用する:相続税には、基礎控除の他に、配偶者控除、小規模宅地の特例など、さまざまな控除や特例が存在します。遺言書を活用することで、これらを最大限に活用することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
遺言書を作成し、適切に資産を管理することで、残された家族が相続争う「争族」を無くし円満な相続を実現することが可能です。また適切な相続税対策を行うことで、相続に関するトラブルや税負担を減らすことができます。
法的に有効な遺言書を作成するために、また税制や控除の内容は変更が多いため、最新の情報を確認し、専門家と相談しながら対策を進めることをお勧めします。
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