「技術・人文知識・国際業務」の在留資格取得は、日本で専門職に就く外国人にとって重要なステップです。高い技術力や国際的な視点を持つ人材を受け入れるために、日本ではこのビザ制度を設けていますが、その取得には特定の要件や手続きが必要です。この記事では、申請の流れや必要書類、そして注意すべきポイントについて詳しく解説し、日本でのキャリアを考える外国人や能力のある外国人を雇用したい日本の企業に役立つ情報を提供します。
在留資格、技術・人文知識・国際業務について
活動系在留資格の現状
日本に入国する外国人の新規入国者数は2019年に過去最高の3,119万人に達し、2020年から2022年にかけて、コロナウイルスのパンデミックにより世界中で渡航制限が課され、日本でも入国者数が大幅に減少しました。この影響で、留学生や観光客などの外国人入国者数が急減しました。その後2023年の新規入国者数は2,375万人となり、2019年には及ばないものの急速な回復を見せました。
2024年日本の外国人入国者数は年1月から6月までに、約1,777万人超の外国人が日本を訪れており、これは前年同期比で65.9%増加しています。
その様な状況の中、日本に外国人が入国するための資格のうち、短期滞在(観光で訪れた人など)と「居住系資格(永住者・日本人の配偶者・永住者の配偶者等・家族滞在・定住者・特別永住者)」を除く、「活動系資格」の中で、「技能実習」「留学」に次いで3番目に多い資格が「技術・人文知識・国際業務」です。
(著者作・参照 出入国在留管理庁 在留外国人統計)
在留資格、技術・人文知識・国際業務とは?
「技術・人文知識・国際業務」とは、日本での特定の専門的な職業に従事するための在留資格の一つです。このビザは、特に技術職や事務職、国際業務などの高度なスキルや知識を必要とする仕事に就く外国人に向けて発行されます。
対象となる業務
この在留資格は、以下のような業務を対象としています:
- 技術分野:
特に理工系の専門知識を持った技術者やエンジニアが対象となります。主な職種の例は以下の通りです。
- ITエンジニア: システム開発、プログラミング、ソフトウェアエンジニアリングなど。
- 機械工学・電子工学: 製造業や技術開発で、機械設計や製造プロセスの改善に関わる業務。
- 建設技術者: 建築物やインフラの設計や施工に携わるエンジニア。
この分野では、大学の理工系学部卒業、または関連する実務経験が重要な資格条件となります。
- 人文知識分野:
文系分野の専門知識を活用した業務が該当します。主な業務例は以下の通りです。
- マーケティング: 企業の市場調査や製品のプロモーション活動に従事する業務。
- 法務・コンサルタント: 法律や経営に関するアドバイスを提供する仕事、またはビジネスコンサルティング。
- 金融アナリスト: 金融市場の分析や企業の財務状況に基づいたアドバイスを行う業務。
この分野でも、大学での専攻分野に関係する知識や学位が要求されます。経済学、法学、社会学などの専門的な知識を活用する業務(例:コンサルタント、マーケティング)。
- 国際業務:
グローバルなビジネスや外国語のスキルを必要とする業務です。
- 翻訳・通訳: 外国語の書類の翻訳や、ビジネス会議などでの通訳業務。
- 貿易業務: 海外の取引先との交渉や、輸出入業務に関わる仕事。
- 国際関連のプロジェクトマネージャー: グローバルなプロジェクトを管理し、海外のクライアントやパートナーと協力する役割。
この分野では、外国語のスキルや国際ビジネスの経験が求められることが多いです。
取得条件
この資格を取得するには、各業務において、学歴に加え、関連分野での実務経験が求められる場合がほとんどです。また、日本での就職が確定している雇用契約が必要です。以下の条件を満たす必要があります:
- 学歴または実務経験: 関連分野の学士以上の学位、または同分野での10年以上の実務経験が必要です。
学歴: 大学(学士号)またはこれに準ずる学位を取得していることが基本的な条件です。専攻は、申請する業務に関連する分野である必要があります。たとえば、技術分野であれば理工系、国際業務分野であれば外国語や国際ビジネスなどです。申請には卒業証明書などの入手が必要です。
実務経験: 専門分野における10年以上の実務経験がある場合、学歴がなくても申請が可能です。この経験には、アルバイトやインターンシップは含まれず、正式な雇用契約に基づく仕事である必要があります。雇用契約証明書などの書類が必要になります。 - 雇用契約: 日本国内の企業や団体との正式な雇用契約を結んでいることが必須です。
この雇用契約は、申請する在留資格に対応する職種である必要があり、申請者のスキルや専門知識が雇用先で活用されることが求められます。 - 給与条件:
日本人が同様の業務に従事する場合と同等以上の給与を受けることが求められます。これにより、外国人労働者が不当に低い賃金で働かされないよう、適正な条件での雇用が確保されます。給与などの条件が明示された雇用契約書の他に、他の従業員の給与レベルを証明する書類が要求されます。
在留期間
在留期間は、1年、3年、または5年が一般的で、更新が可能です。
申請手続きの主な流れ
申請者はまず、日本国内の企業や団体と雇用契約を結びます。この雇用契約が、在留資格に適した業務内容であることが前提です。
次に、雇用主が日本の出入国在留管理庁(入管)に「在留資格認定証明書」を申請します。この証明書は、申請者が日本で適法に働くために必要な証明書で、これを取得することが重要なステップです。
(引用:在留資格認定証明書交付申請書(サンプル))
- 提出書類:
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 申請者の学歴や職歴を証明する書類(卒業証書、職歴証明書)
- 雇用契約書のコピー
- 企業側の登記簿謄本や財務諸表など、会社の情報を示す書類
- パスポートコピー
- 上記の他に理由書など個々の事情に応じて様々な書類が要求されます
申請が認められると、在留資格認定証明書が発行されます。この証明書の取得は通常、数週間から数か月かかる場合があります。
日本国外にいる申請者は、在留資格認定証明書を持って、日本大使館または領事館でビザの申請を行います。この際、次の書類が必要です。
- パスポート
- ビザ申請書
- 在留資格認定証明書
上陸許可申請とは、外国人が日本に入国する際に必要となる手続きの一つで、日本への入国に際して入国審査官により許可を受けるための申請です。具体的には、外国人が日本に到着し、空港や港の入国審査において、上陸の許可が求められます。
日本への上陸を希望する外国人は、あらかじめ有効なビザ(査証)を取得している場合でも、入国の際には上陸審査を受けなければなりません。この審査で、以下のような要件が確認されます:
- 有効なパスポートを所持していること
- 日本に適法に滞在する目的があること
- 日本国内で犯罪行為に関与しないこと
- 上陸拒否事由に該当しないこと
- 入国後の滞在期間および目的に応じた在留資格が与えられること
上陸許可が下りると、日本に一定期間滞在できる「在留資格」が付与されます。これにより、ビジネスや観光、留学、就労など、申請した在留資格の範囲内で日本国内での活動が認められます。
上陸許可が得られると、申請者は日本に入国し、空港で在留カードを受け取ります。(一部の空港を除く)この在留カードは、日本での滞在中に身分証明書として使われます。
日本到着後、14日以内に最寄りの市区町村役所に転入届を提出する必要があります。
上陸時に在留カードが発行されない空港等から入国した場合、転入届を提出後、約2週間以内に在留カードが郵送されます。
このように、申請手続きは複数のステップを経るため、必要な書類や手続きの確認をしっかり行うことが重要です。
在留許可申請が不許可になった場合の対策
在留許可申請が不許可になった場合、以下の対策を検討することが重要です。
- 不許可理由の確認
入国管理局(出入国在留管理庁)から通知される不許可理由を確認することが第一ステップです。書類の不足や不備、申請内容に問題があった場合、それを解決するための対策が立てやすくなります。確認方法としては、不許可通知の詳細や入管に直接問い合わせる方法があります。 - 再申請
不許可理由が明確で、その原因が解消可能な場合は、再申請を検討します。たとえば、書類の不備や提出ミスなどの場合、正しい書類を準備し、誤りを修正して再度申請することができます。このとき、不許可になった理由をしっかりと説明し、適切な対応を取ったことを強調することで、次の申請が許可される可能性が高まります。 - 専門家への相談
複雑な理由や不明瞭な理由で不許可になった場合、行政書士や弁護士といった専門家に相談することが有効です。専門家は過去の類似ケースや法律的な見解に基づき、再申請や異議申し立てのアドバイスを行ってくれます。外国人の在留資格に特化した行政書士も多く、専門家のサポートは次回の申請を成功させる鍵となります。 - 異議申し立て
不許可に対して異議がある場合、異議申し立てを行うこともできます。ただし、日本の在留資格の審査では、異議申し立ての正式な制度が広く適用されていないため、事実上は再申請や新しい証拠をもとにした再審査の形式となる場合があります。異議申し立ての際には、できる限り詳細な資料や証拠を追加し、問題点を解消することが重要です。 - 出国してからの再申請
在留期間が満了し、再申請が間に合わない場合や、すぐに再申請を行うことが難しい場合は、一時的に日本を出国してから、在留資格認定証明書を取得し、再度入国を試みる方法もあります。この方法では、日本国内での就労や生活を一時的に中断しなければなりませんが、再申請の準備に時間を取ることができます。 - 他の在留資格の検討
申請した在留資格以外の資格で、日本での滞在が可能かどうかを検討することも一つの対策です。例えば、留学ビザや家族滞在ビザなど、別の資格に適合する場合、その在留資格への変更申請を行うことも考えられます。 - 在留期間中に解決を図る
不許可の通知を受けた後も、在留期間が残っている場合は、その間に不許可理由を解消し、再申請を試みることが可能です。在留期間内に問題を解決し、早めに再申請することで、許可されるチャンスが増えます。 - まとめ
在留許可申請が不許可になった場合、まず理由をしっかり確認し、その理由を解決するための行動を取ることが重要です。必要に応じて専門家に相談し、次回の申請に向けた適切な対策を講じましょう。
在留期間の延長
在留期間が満了する前に、必要に応じて在留期間の延長を申請できます。この場合も、企業との雇用関係が続いていることが条件です。
在留期間の延長を申請する際には、以下の要件を満たす必要があります。
- 引き続き活動していること
申請者は、引き続き同じ在留資格に基づく活動を行っている必要があります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の資格で働いている場合は、その職務が現在も継続しているかどうかが審査されます。 - 雇用契約が継続していること
在留期間の延長を申請するためには、雇用契約が有効であることが必要です。企業との雇用関係が継続していることを証明するために、雇用証明書や給与明細などの書類を提出します。 - 適切な報酬が支払われていること
日本人が同じ業務に従事する場合と同等またはそれ以上の報酬を受け取っていることが求められます。これは、申請者が適正な雇用条件で働いていることを確認するためです。 - 納税や社会保険の加入状況
所得税や住民税などの納税状況が良好であることが重要です。また、日本で働いている場合、社会保険(健康保険や年金)に加入しているかどうかも審査対象となります。 - 申請期限の遵守
在留期間満了日の3か月前から満了日までの間に延長申請を行うことが求められます。満了日を過ぎてからの申請は原則として認められません。 - 提出書類
延長申請には以下の書類が必要です:
- 在留期間更新許可申請書
- 雇用証明書または契約書
- 税務関連書類(納税証明書、課税証明書)
- 給与明細書
- パスポートおよび在留カード
- 更新申請の時期
在留期間の更新申請は、在留期間満了日の3か月前から提出が可能です。したがって、申請者は満了日の3か月前から満了日までの期間に、更新申請を行うことが求められます。早めに申請を行うことで、手続きがスムーズに進むため、余裕を持って提出することが推奨されています。
- 早すぎる申請は受理されません。満了日の3か月前が最も早く申請できるタイミングです。
- 満了日を過ぎてからの申請は基本的に認められず、不法滞在となる可能性があるため、期限内の申請が非常に重要です。
申請時期を守り、必要書類を揃えて提出することで、スムーズな更新手続きが可能となります。
- 申請結果
審査の結果、在留資格の延長が認められると、新たな在留期間が付与されますが、審査の結果次第では延長が認められない場合もあります。その際は理由が通知され、場合によっては異議申し立ても可能です。
在留許可申請に必要な手数料
在留許可取得申請に関連する手数料は、申請の種類によって異なります。主な手数料は以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 手数料:無料
- 在留資格認定証明書自体の申請には手数料がかかりません。ただし、この証明書を取得した後、ビザ申請時に手数料が発生します。
- 在留資格認定証明書自体の申請には手数料がかかりません。ただし、この証明書を取得した後、ビザ申請時に手数料が発生します。
- 手数料:無料
- 在留期間更新許可申請
- 手数料:4,000円
- 在留期間の延長を申請する際には、更新手数料として4,000円が必要です。この手数料は申請が許可された後に支払います。支払い方法は収入印紙を購入して行います。
- 在留期間の延長を申請する際には、更新手数料として4,000円が必要です。この手数料は申請が許可された後に支払います。支払い方法は収入印紙を購入して行います。
- 手数料:4,000円
- 在留資格変更許可申請
- 手数料:4,000円
- 在留資格を変更する場合も、変更申請が許可された際に4,000円の手数料が必要です。この手数料も収入印紙で支払います。
- 在留資格を変更する場合も、変更申請が許可された際に4,000円の手数料が必要です。この手数料も収入印紙で支払います。
- 手数料:4,000円
- 再入国許可申請
- 手数料:3,000円(1回限りの許可)または6,000円(複数回の許可)
- 一時的に日本を出国し、再度入国する際には、再入国許可が必要です。1回限りの許可と、複数回の再入国を認める許可では手数料が異なります。
- 手数料:3,000円(1回限りの許可)または6,000円(複数回の許可)
手数料は申請が許可された際に支払うため、事前に準備しておくとスムーズに手続きを進めることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
外国人が日本に在留するための在留許可を申請した通りに滞りなく取得するためには、非常に細かく厳格な要件が決められており、最終的には入国管理局が申請者の状況を総合的に判断して決定されます。
つまりこれは、入国管理局(出入国在留管理庁)が申請を審査し、その結果を決定する過程で、一定の裁量が行使されるということを意味します。
在留許可が得られるかどうかは、本人はもちろん、雇用を予定している日本側の受け入れ企業にも、大きな影響があります。早い段階で専門家の助けを借りることを強くお勧めします。
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